医療事故の記事を見ると切ない。患者さん（遺族）に思いを馳せると同時に「明日はわが身」と思ってしまうからだ。
　多少不遜な言い方で申し訳ないが「このケースで医者が訴えられるのは、少々きつい」と思うこともある。医療は万能ではなく必ずしも治せないこともある。そのすべてで訴えられたら、私たちは医療という生業を（なりわい）行えなくなってしまう。

　ただ、医療訴訟が起こるのは医療事故がおきたからというよりも、その後の対応が原因なのだとおもう。感情論を含めたさまざまなレベルの行き違いから、医療訴訟は起こるのだ。医療サイドは経過を正直に話すべきだし、謝りたければ謝った方がいいと思う。このことについてはまた改めて書きたいと思う。

　研修医の頃、医療事故を体験した事がある。いや、別に事故ではなくて正確には上司の小さなミスであり、後遺症などの不利益は全くなかった。当時の上司は隠そうとした。しかし、私は保護者に正直に話し謝罪した。そのため当時の上司からかなり疎まれてしまった。でも、私は正しいことをしたと思っている。