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タミフルと異常言動、関連性「なし」 厚労省研究班2006年10月29日20時38分 抗インフルエンザウイルス薬オセルタミビル(商品名タミフル)の服用者が異常言動で死亡した例などが報告されているが、「小児のタミフル服用と異常言動の関連性は認められなかった」という研究結果が厚生労働省の研究班(主任研究者、横田俊平・横浜市立大教授)の調査で分かった。 異常言動は、インフルエンザの合併症として多く発生する脳症の前にも出るとされるが、タミフルの服用が影響しているのか注目されていた。 調査は昨年度、全国12都県の小児科医を通して行い、2846件(99.5%が0歳から15歳まで)の回答を得た。発熱後7日間の服薬状況や肺炎や中耳炎の併発、けいれんや意識障害、幻覚やうわごとなどの異常言動があったか答えてもらった。 調査対象の患者の9割がタミフルを服用していた。服用した患者の異常言動発生率は11.9%。一方、服用しなかった患者の異常言動の発生率は10.6%だった。統計学的に意味がある差ではなかったという。 医師への調査とは別に、患者の親らにも調査票を配って調べたところ、2545件の回答があった。こちらもタミフル服用による異常言動の発生率の上昇はみられなかった。 厚労省によると、01年の販売開始から今年6月末までに、タミフル服用後に異常言動などで死亡した16歳以下の患者は15人。医薬品による副作用被害に救済金を支給する国の制度に申請した例もあるが、これまでのところ、副作用と認められたケースはない。 タミフルは、鳥インフルエンザが変異して起きるとされる新型インフルエンザの治療薬としても期待され、国や自治体が備蓄を進めている。 横田教授は「明確な結論を得るにはさらなる検討が必要で今年度も詳細な研究をする」と話す。
# 仮説がないそもそも、この種の疫学調査には「仮説」がなければならない。この調査の場合、明瞭に「タミフルと異常行動の関連はない」あるいは逆に、「タミフルと異常行動の関連がある」との仮説が検証されなければならない。ところが、この調査の「目的」をみても仮説らしいものが全くない。調査目的のまとめは、「インフルエンザに伴う随伴症状の調査、処方の実態調査を実施した。」とあるだけである。要旨にむしろ目的らしいものが記載されている。骨子を要約すると、「インフルエンザで乳幼児に発症する脳症の、発熱後けいれん、意識障害、異常行動・言動が、脳症の前駆症状か、それともインフルエンザの一般的な随伴症状か、あるいは治療に使用した薬剤の影響が拘わっているのかなどが不明なので、症状と使用した薬剤との関連(を知る目的で)、調査し、統計学的解析を行った。」何との関連を主要に検証するのか、つまり主要な仮設はない。ということは、検証する目的としたタミフルとの関連についても、まじめに、真剣に検証しようとする態度がないことをそもそも最初から示しているといえる。
タミフルは2.9~4.8倍異常言動を起しやすくする――タミフルの影響は初日に集中すること考慮し適切に計算すれば――
# 非ステロイド抗炎症剤について全く調査していない
# チェックもれでタミフル使用例が未使用例に薬剤を使用か未使用(非使用)かは、1日を3分割した欄に、使用した場合にチェックマークをつけるだけである。使用しなかった場合に意識して「非使用」にチェックするのではない。したがって、使用していても、チェックし忘れは「使用なし」と解釈される。これは、極めて初歩的な誤分類を誘発する方法であり、疫学調査では回避すべき方法である。したがって、「タミフルと異常言動との関連性はタミフルを未使用での発現頻度は10.6%であったのに対し、タミフル使用では11.9%と有意差を認めなかった。」との数値は、仮に報告書の頻度計算方法に誤りがないとしても、額面どおりには受け取ることができない。もしも、2日目までで、1区間に1人ずつがタミフルを服用していたのに服用していない方に分類されていたと仮定すると、報告者の解析方法を用いたとしても10.1%対12.3%と2.2%の差が出る。さらに、84人の異常が生じたという1日目の夜に、5%(4人)誤分類が生じていたと過程すると、9.9%対12.7%と、2.8%の差となる。第2項目にすでに詳述したような発症頻度の計算方法を適切にした場合、誤分類を適切に補正すれば、オッズ比は2.9倍~4.8倍よりもさらにタミフルが異常言動を起しやすいという結果になであろう。
# 重症例を、軽微な症状の例で薄めたのでは患者家族や医師に示された異常言動の症状の例は、主にライ症候群やインフルエンザ脳症の発症初期の言動から抜き出したものであろう。「ウワゴト」程度に相当するような、極めて軽微な症状も多数含まれる。一方、タミフルですでに生じたことが知られているような、窓から飛び降りる、飛び降りようとする、外に出て走り事故にあう、呼吸困難、チアノーゼなどの症状については、記載するための欄すら設けられていない。また、リン酸オセルタミビル服用後の睡眠中突然死や異常行動による事故死も重要な問題であると考える。リン酸オセルタミビルはバルビタール剤のように中枢神経抑制作用があるため、体温低下を生じる[6]。したがって、最も危惧される事故死につながるような重篤な異常行動ではなく、その多くが軽微な症状であると考えられる。タミフル未使用の対照群でさえ10%もの頻度で異常言動を生じたとしていること(われわれの再計算でもピーク時には5.2%の頻度であったこと)が何よりも、このことを物語っている。強い症状の異常行動が本来問題であるのに、これらのごく軽い症状のものを多数加えられると、単に高熱でも出る軽微な症状がタミフル未服用群にも多数生じるため、差が目立たなくなる。そのためにより差が縮まっている可能性が大いに疑われる。このことを考慮しなければならない理由は、インフルエンザ脳症の症例対照研究(佐藤班)においてとられた、「差を目立たなくする手法」がすでによく知られているからである。佐藤班の調査報告書のデータを用いて死亡脳症と非ステロイド抗炎症剤の関連を求めるとオッズ比47(p=0.0019)という有意の関連が認められる。非ステロイド抗炎症剤を使用すると使用しない場合に比較して、死亡するような重症脳症を47倍起しやすいといって間違う可能性は1000の2つもないということを意味する。通常間違う可能性として20に1つ以上、間違う可能性がなければ、統計学的に有意の関連といえるので、この可能性は極めて信頼できる。ところが、佐藤班の報告書では、非ステロイド抗炎症剤との間には有意の関連が認められなかったとしている。その最大の理由は、「インフルエンザ脳症」という症例の中に、後遺症もなく軽快した例や、単に軽症後遺症例などを混入したことだ。しかもその数が極めて多いのが特徴である。死亡脳症例の4倍以上もの軽症例を一緒にして集計したのである。それでも、非ステロイド抗炎症剤をどちらかを使用した例の頻度で比較すると有意の関連があった。そこで報告者はどうしたかというと、個々の非ステロイド抗炎症剤を別々に集計して(ジクロフェナクとメフェナム酸を別に集計して)やっと、関連は有意でなくなったのである。したがって、厚生労働省の研究班ではこうした詐欺的集計を平気でする研究者の集団であるから、今回の報告も全く信用できない。もっとも、第2項ですでに述べたように、今回のデータ操作の中心は、累積頻度の計算方法にあるが、症状を重大問題例に限ればさらに頻度の差は大きくなると考えられる。
# 試験計画自体が、差を出さなくするため作為的非ステロイド抗炎症剤の使用について調査票からその項目を抜いたこと、タミフル使用例が非使用(未使用)例に誤分類される可能性の高い調査票としたこと、軽症例を多数混入する方法は、いずれも、タミフルと対照群との差を小さくする方向に働く。実際には、そのことを考慮せずと適切な計算をすれば著しい有意の差となったが、これらを適切にすれば、さらに大きな差となるので、この問題も無視しえない。実質的にも問題であるが、もともと、非ステロイド抗炎症剤を調査項目から除き、誤分類が容易に生じるよう、また軽症例を多く混入させるように、調査計画が立てられたこと自体、大問題である。意図的に差を隠すための計画が当初からなされていたと考えて間違いないと考えられるからである。国の研究班のメンバーは、医学および統計学の専門家の集まりである。これらの学者が、基本的な医学と統計学の素養のあるものにとっては常識的な計算を間違うはずがない。したがって、この報告書は、統計を用いた詐欺的な調査ではないかと疑う。しかし、インフルエンザ脳症研究班では、佐藤班の報告書に見られるように、いくつもの作為的、否、詐欺的な報告書が見られるのでもはや驚くことではない。このような、科学的不正に満ちた調査で有意の関連がなかったといっても「関連なしの証明」には全くならないことは確かである。
と書いたのですが、よく読みなおしたら、「調査した患者の約9割がタミフルを飲んでいた」んですね。う~む。ということは、2250人中268人と、 250人中 27人の異常行動の比較です。27人しか分母がないと、「異常行動の質・程度」の面で、この二つの集団で差がなかったということは、とても検証できるとは思えないですね。ということで、ぼく自身は、安心するのは、もう少しお預けにしておきます。