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テロや人身売買、麻薬取引など国際的な組織が絡む犯罪を、未然に防止しようという「国際組織犯罪防止条約」が、この法律の背景にあります。つまり、国家の枠を超えてはびこる組織犯罪を撲滅しようという国際条約を批准する上での国内法の整備というのが、この法律「組織犯罪処罰法」の建前になっているのです。 この条約を、日本も03年5月に批准しました。批准国は、すでに119カ国に達しています。 世界中から組織犯罪をなくす。その方向性は正しい。誰も文句の付けようはない。しかし例によって、これを名目にして、日本の官僚たちや政府自民党は暴走を始めます。とにかく何でも自分の都合のいいように利用してしまう性質を持った人たちなのです。「この条約の国内関連法として、共謀罪を含む法律を作る」と言い出したわけです。 ならば、「国際的犯罪集団」を対象にすればいいものを、「国内犯罪」にまでその範囲を広げようというのです。 まったく、目を離すと何をしでかすか分かりません。 第一の問題点は、なんといっても、その適用範囲が広いこと。 初期の目的であった「国際組織犯罪」なんて、いつの間にかどっかへ吹っ飛んで行ってしまいました。 だってね、この「共謀罪」の対象になるのは、4年以上の懲役または禁固にあたる犯罪すべてです。その数は、なんと620種類にも及ぶというから呆れませんか。 万引き、窃盗、酒の無免許製造、詐欺、脱税、もうちょっとした「犯罪」なら、ほとんどが対象になってしまうのです。これらのいったいどこが「国際組織犯罪」と関係あるのですか! よく例に出される話ですが、住民運動で「マンション建設反対を目的として座り込みの相談」をしただけでも、この共謀罪に問われかねません。 もちろん、政府や官僚は「そんなことには適用できないように縛りをかけてあるから安心です」と言います。しかし、そんな言葉が信用できないことは、それこそ憲法問題を考えるだけでお分かりでしょう。 日本国憲法をどれだけ捻じ曲げて解釈してきたか。 自衛隊のイラク派兵など、これまでの憲法解釈からは、絶対に許されるはずがなかったことです。それを、「自衛隊のいるところは非戦闘地域」という、歴史に残る詭弁答弁で切り抜けた首相を、残念ながら私たちの国は今も首相として戴いているのです。 このような詭弁、必ずやこの「共謀罪」でも登場するでしょう。そうして、どうということのない「酒場でのバカ話の盛り上がり」も、逮捕への一里塚になりかねない。「あの野郎、アッタマにくる。今度、みんなでボコボコにしようぜ」は、完全にアウトですよ、そこのお若いの! しかし、ここにも抜け道があります。 自首したり内部告発した人の刑を、免除したり軽減したりするという規定があることです。 つまり、チクッたヤツは無罪、チクられた人は有罪。 どうです? これではほとんど密告社会、監視社会じゃありませんか。 権力に都合の悪い連中をやっつけるため、ある集まりにスパイを潜り込ませ、議論を過激な方向へ煽動する。その上で、その会合の様子をスパイが警察にタレ込む。そして、集まって話し合っていた人々をゴッソリと逮捕する。スパイは自首したから罪には問われない。それこそ権力の思うツボ。 権力が行うことに反対する連中は、いつだって取り締まれる。考えてみると、権力にとってこんなにオイシイ法律はありません。そう思いませんか? しばらく前に、この共謀罪について、保坂展人衆議院議員にお話を聞いたことがあります。彼は、国会での審議で次のような呆れた答弁を聞いたといいます。「例えば、何かを話していて、その話題について言葉としては何も発しなかったけれど、目配せでウンウンと同意を示した、というような場合でもこの共謀罪に問われることがあり得るのか?」と保坂議員が問いただしたところ、法務省の役人は「時と場合によるが、共謀罪に問われることもある」と答弁したというのです。頷いただけで、逮捕---。 スポーツの世界でよく言われる「アイ・コンタクト」なんか、そのうち死語になりかねない。 それにしても不思議なのは、またしても公明党です。なぜ、自民党と一緒になって、こんな悪法を成立させようとするのか。 彼らの支持母体である創価学会の初代会長は、戦前、獄死しているじゃありませんか。権力が組織を潰そうとするときの冷酷さは、身に沁みて知っているはずなのですが、知っているだけに権力から離れたくない、ということなのでしょうか。 創価学会の会員たちのひとりひとりに、本当の胸のうちを聞いてみたいと、私は切実に思うのです。 もうあまり知っている人もいなくなってしまったようですが、戦前、「横浜事件」という大冤罪事件がありました。 評論家・細川嘉六氏を中心にした総合雑誌の担当編集者たちなど十数名が、旅先で宴会を開いた時の浴衣がけの写真を証拠として「共産党再建会議」の名目で逮捕され、うち5名が獄中で死亡。もちろん、過酷な拷問もあったとされます。 これがただの慰労のための宴会旅行であったことは、当時の旅館の女将の証言からも事実だといわれています。宴会の写真を証拠として、権力の恐ろしさを見せ付ける。 同じことがもう二度と起きないと、誰が言えるでしょうか。この事件を知っている人たちは、ほとんどが、今回の「共謀罪」に同じ危うさを感じているのです。(今週のキイ選定委員会)