昔、とある助産院から来た赤ちゃんたちは、ちょっと変わっていた。

　みんな完全母乳なのだ。順調に育っている赤ちゃんもいるが、中には体重がなかなか増えない赤ちゃんもいた。

　完全母乳の赤ちゃんは概して、体重が低い。これは生理的なことだし、低いながらも増えていれば、問題はない。しかし、体重が増えないのだ。

　そういった赤ちゃんのお母さんは、大概疲れた顔をしていた。充分に睡眠がとれず、目にクマができていた。母乳がなかなかでないということだ。30分以上もすわせても足りない。
　助産院からの指導はどうだったか聞いてみたが、「なんじゃこりゃ」という感じだった。

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　その助産院の助産師に聞いてみた。開口一番、「完全母乳は法律で決まっています」ということだった。その法律名を聞いてみたが、答えてくれなかった。どうやら、ユニセフの「母乳育児を成功させる ための１0か条」ことを言っているらしかった。当然のことながら、法律で定められたものではない。

　また、どういった基準で完全母乳を行っているかを聞いた。その助産師はとある有名な病院名を持ち出して、その病院で行われている基準だということだった。
　実は私はかつて、その「有名な病院」で勤務していたことがあったが、そういった母乳指導はしていなかった。そのことを伝えた。

　その助産師は、興奮気味に「その基準は、病院のパンフレットに書いてあります」と答えた。そのパンフレットを見たが、そのようなことは書いていなかった。

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　とにかく、「そのような基準」で困っている母親がいることを改めて伝えた。助産師は、「母親のストレスでそうなったのでしょう」と答えていた。その助産院では、退院後の母乳指導はあまりやっていないようだった。時間がないということだった。

　このような基準でなら、完全母乳はやめたほうがいいと伝えた。そしたらその助産師はキレてしまった。

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　風の便りで、その助産師が私のことを「ヤブ」といっていると聞いた。ああそうですか。
　また、予防接種はしなくてもいいと母親に言っているとのことだった。母乳には免疫物質や白血球が充分に含まれているから、予防接種は不要と母親に教えているということだった。ああそうですか、そうですか。

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　上に書いたことは、あくまで御伽噺なので念のため。この御伽噺から得られることは、「ちゃんとしたフォローがなければ、安易な母乳指導は控えるべき」ということだ。

「御伽噺」の続き（７月２６日追記）

　母親に、今までの苦労をねぎらい、人工乳を補うことは必ずしも悪いことではないと伝えた。他にもいろいろとお話した。

　母親はそのまま、泣き崩れた。

　子どもは人工乳もよくのみ、母親の顔も明るくなった。母乳自体の出もよくなった。子どもの体重もよく増えた。


　あくまで「御伽噺」なので、念のため。