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2点目として,ルーマニアでの今回の流行に際する状況と比較して,わが国では感染症の流行が見られた場合に,その責任を誰が取るのかきわめて曖昧だということだ。代表的なワクチン予防可能疾患である麻疹(および風疹も)の予防については,厚労省は患者発生を押さえ込もうとする意思の欠如,あるいは患者発生時の責任回避の傾向が見て取れることは,昨年(2005年)8月に公布され,本年4月より実施される予防接種法の政省令改正を見ればかなり窺い知れる,と筆者には感じられる。この改正は,麻疹,風疹の定期接種を1期(1歳代),2期(小学校入学日前より1年間)の2回接種とし,麻疹・風疹混合ワクチン(以下MR)を使用することを含んでおり(この点は大きく評価される),ついに日本も麻疹・風疹の排除に向けて腰を上げたかのように見えた。 しかし,実際にはこれらの動きは現状ではポーズに過ぎなかったようだ。2期のMR接種を受けられるのは,2005年4月2日以降に出生した児であり,2010年までの5年間,実質的に2回接種は行われない。また使用ワクチンについては,2006年4月1日以降はMRのみ使用可能であり(従来の麻疹および風疹単抗原ワクチン(MおよびR)は定期として使用不可),過去にMおよびRの一方あるいは両方を別々に接種した者,過去に病気としての麻疹および風疹のいずれか一方に罹患したとされる者は,未接種あるいは未罹患であってもMR,M,Rのいずれをも定期予防接種として接種不可となる。また保護者がMやRを希望する場合,法に基づかないが,各市町村の費用負担にてこれを行い得る,として市町村に実施と責任を完全に丸投げされている。 (略) 昨秋,日本を含むWPRO(WHO西太平洋地域事務所)は,2012年までの地域内からの麻疹排除をゴールとすることを正式に宣言した。厚労省は,世界の流れも見ながら,麻疹・風疹対策強化のための2回接種導入を検討したはずだ。しかし,法令上の整合性を重視し,また副反応訴訟への懸念を重視するあまり,医学的に無理のある多くの制約に加え,今後も流行が発生するリスクへの視点を明らかに欠いてしまった。
従って平成18年4月1日からの制度改正までは、これまで通り、その間の対象者には、速やかに接種をすすめることが必要です。ことにこれまでに未接種となっている対象者や、平成18年4月1日以降で2歳以上になってしまう子どもたちには、麻疹・風疹の早期予防として、平成18年3月31日までに麻疹、風疹の単味ワクチンをそれぞれ接種しておくべきと考えられます。 今単味ワクチンの接種を受けてしまうと2期のMRが受けられなくなる、またまもなくMRが実施になるので今2回を接種する必要はなく4月まで接種を控えてはどうか、という考えもあるようですが、現時点で麻疹風疹ワクチンの接種を控えることは、両疾患に対する感受性者が増加することであり、疾患予防の観点からは勧められません。ただし、3月になり4週間間隔の生ワクチンをそれぞれ2回接種する時間がなくなった時には、流行状況などをみながら4月のMR出現を待つのはやむを得ないことと考えられます。
この時に問題になるのが、(*)2期のMRワクチン接種を受けられるのは、1期でMRワクチンを受けた者(すなわち新制度下での1期目の接種を受けた者)が原則であること、そして(***)麻疹ワクチンまたは風疹ワクチンのどちらかを接種した者は、定期接種として他方のワクチンを受けることができない、との経過措置ですが、これについては厚生労働省による研究班を立ち上げ、なるべく早く単味麻疹、および単味風疹ワクチン接種者へのMRワクチン接種が問題ないことを確認しようとする計画が動いています(**)。これらの研究の結果、この方式による効果と安全性が明らかになれば、経過措置は速やかに外されることが厚生労働省結核感染症課より言明されているので、平成18年3月末までにそれぞれのワクチン接種を受けた人が2期接種の対象年齢になった時に MRワクチン接種ができなくなる可能性は極めて低く、将来の2期接種を考慮して現時点での単独ワクチン接種を控えることは得策ではないと思われます。 なおこの研究について日本小児科学会予防接種感染対策委員会は全面的に協力する姿勢を表明しています。