麻疹ワクチンよりもポリオワクチンを優先させる地域がある。麻疹ワクチンが未接種なのに、インフルエンザワクチンを打ってくださいとくる親がいる。

　マスコミはインフルエンザの話題はよくするけれど、麻疹や百日咳のお話はあまりしてくれない。

　MRワクチン（これは今年の４月から）とか、百日咳入りワクチンを青年期でもはじめる（これは今年のアメリカ）とか、そういった話題はなかなか広まらない。

　個人的にはインフルエンザワクチンの宣伝にかける費用・エネルギーを麻疹ワクチンにもっと傾けるべきだと思う。こんな事を書くと、とある上司に起こられそうなので、ここでこっそりと書くことにする。

　BCGの制度が変わったとき、いくつかの地方では多少混乱した。生後3か月から6か月の間に接種しないといけないのだ。今までは年に数回BCG接種をすればよかったのに、今後は毎月接種する必要が出てきた。接種漏れの児にはどのように対処すればいいだろう？
　予算や人員を捻出しないといけない。でもなかなか予算が下りない。
　結局、「自治体の４割、１歳未満のＢＣＧ未接種児への対策なし」という事態になった。生後6か月以降でも自治体が責任を持って接種することが出来なかったのだ。いや、正確に言うと国が責任をもって接種することが出来なかったのだ。

　移行期間の問題は本来は国が解決するべきなのに、地方自治体に丸投げしてしまった。もちろん、比較的大きな自治体なら余裕があった。しかし、いわゆる中小の自治体は体力がない。仮に自治体で接種費用を捻出したとしても、副反応があった場合の保障も、定期接種（つまり生後3か月から6か月までの接種）の様にはなかなかいかない。
　国が予防接種についてどのように取り組むつもりなのか、政治的な意思 political will をしっかり地方に示し場合によっては援助しないと、地方は動けないこともある。悲しいがこれが現実だ。残念ながら、地方のチカラは十分ではない。

　今後風疹・麻疹の単味ワクチンからMRワクチンに移行する。４月から風疹・麻疹の単味ワクチンの面倒は、今までの様に国は見てくれない。どのような移行措置をするかは自治体が決める。自治体によっては、来年度「接種漏れ」が増えてくるだろう。

　「政治的な意思」なんて書くと、色々と意見があるかもしれない。これについては後で書く。

　タイトルを読むと、驚かれるかもしれない。コールドチェーン cold chain の直訳だ。

　コールドチェーンとは、主に食品流通などで使われるらしい。鮮魚の例をとってみよう。

　釣られた魚は漁船に運ばれて市場に出る。市場からスーパーなどに卸される。その後家庭の冷蔵庫（冷凍庫）へ運ばれる。もし、これらのどこかで低温保管が出来なければ、魚は痛んでしまう。「低温」という鎖が外れると、魚はダメになってしまうのだ。

　冷たい鎖というよりも「低温保管の連鎖」と表現した方がいいかもしれない。この連鎖を断ち切ってはならない（虐待の連鎖は断ち切る必要がある）。

　ワクチンでも同じ事が言える。特に麻疹ワクチンだ。遮光して5度以下に保存する必要がある。

　平成18年2月13日現在、Yahoo!で「予防接種」と検索すると、スポンサーサイトが出てくる。

* 健康被害救済制度とは -
予防接種が原因の健康被害者に医療費等を給付。詳細はこちら。
www.pmda.go.jp

　独立行政法人医薬品医療機器総合機構のサイトだ。

　Googleで同じく検索すると、

予防接種は、お注射.com
予防接種の予約受付を代行します
従量課金制でお気軽に始められます
www.inqube.co.jp

　と出てくる。

　私の記憶が正しければ、以前のGoogleのスポンサーサイトは違った。確か、ジャパンマシニスト社だった。Yahooか、Googleで「インフルエンザ」と検索しても、スポンサーサイトとしてジャパンマシニスト社が出ていた。

子どもを守る予防接種情報
ポリオ、三種混合、麻しん、BCGほか
乳児からの予防接種受け方、見送り方
www.japama.jp/

　ふと、今日（2月14日）、もう一度Googleで検索を書けたら、スポンサーサイトが追加されていた。

予防接種は、お注射.com
予防接種の予約受付を代行します
従量課金制でお気軽に始められます
www.inqube.co.jp

要注意。タミフルで死亡例
恐いのは インフルエンザか 薬の
副作用か？ 知っておきたい本当の情報
www.japama.jp/

　リロードすると、「要注意。タミフルで死亡例」云々のスポンサーが無くなっていた。一瞬だけのスポンサーサイトか？

　検索サイトのスポンサーサイトになるのって、どのくらいお金がかかるのだろう？

　ワクチンの接種間隔問題のことだ。

　生ワクチンを打ってからは4週間、不活化ワクチンを打ってからは1週間間隔をあける必要があった。医学的に正しい判断ではなく、行政上決まっていた。医学的にはもう少し短くても良いらしい。

　ここで問題がある。月曜日に不活化ワクチンを打ったとして、次に接種できるのは来週の月曜日だろうか？それとも火曜日だろうか？

　民法がらみでは、来週の火曜日ということになるらしい。でも、ある程度大きな病院でのワクチン外来は、曜日が固定されているのではないか。それでは、不活化ワクチンを打ったら、次のワクチンまで2週間待たねばならないのか。非合理的だ。

　普通の感覚でも、一週間後とは同じ曜日の事なのに。

　ただ、この問題を保健所や厚労省（旧厚生省）に問い合わせるのは、みんな憚れた。この問題について正式に問い合わせて、もし「だめ」という回答が書類で出ればワクチン外来は混乱してしまう。ひいては、接種率の低下につながってしまう。

　問い合わせてはいけないタブー、寝た子を起こすな、という感じだった。


　ところが、世の中には立派な人もいて、色々なところへ掛け合ってくれたのだ。


　1997年版の「予防接種に関するQ&A集」という本には、1週間・4週間ということに具体的な定義はない。2004年度版の同じブックレットには「通常月曜から次の月曜などの予防接種スケジュールは慣例として1週間の間隔とみなされます。」と明記されていた。

　厚労省のサイトにある、現在の「定期の予防接種実施要領」（pdf版はこちら）を覗いてみると、

16 　他の予防接種との関係
(1) 　生ワクチン（急性灰白髄炎、麻しん、風しん及び結核）を接種した日から次の予防接種を行うまでの間隔は、２７日以上置くこと。不活化ワクチン（百日せき及び日本脳炎）又はトキソイド（ジフテリア及び破傷風）を接種した日から次の予防接種を行うまでの間隔は、６日以上置くこと。

　1週間・4週間ではなく、6日間・27日間という表記になった。
　民法自体（あるいは解釈）を変えるのではなく、省が出した通知を変えたのだ。ワクチンの添付文書でも表記が変わっている（全部確かめたわけではないが）。

　尚、「定期の予防接種実施要領」の法的根拠は地方自治法に基づいたものだ。

第二百四十五条の四 　各大臣（内閣府設置法第四条第三項 に規定する事務を分担管理する大臣たる内閣総理大臣又は国家行政組織法第五条第一項 に規定する各省大臣をいう。以下本章、次章及び第十四章において同じ。）又は都道府県知事その他の都道府県の執行機関は、その担任する事務に関し、普通地方公共団体に対し、普通地方公共団体の事務の運営その他の事項について適切と認める技術的な助言若しくは勧告をし、又は当該助言若しくは勧告をするため若しくは普通地方公共団体の事務の適正な処理に関する情報を提供するため必要な資料の提出を求めることができる。

　予防接種と法律の関係というのは考えれば考えるほど、ややこしくなる。

　また、寝た子を起こすなという問題に、同時接種というのがある。いずれ取り上げてみたい。